ノンちゃん雲にのる
子どものころに読んだ本に再会した話。
『ノンちゃん雲にのる』は私が小学生時代に愛読した本だ。池に浮かぶ雲にジャンプして飛び乗り、雲上大旅行?するお話だ。雲を操縦するおじいさんに促されるまま、主人公ノンちゃんが語る自分史がおもしろい。大病にも負けず、がんばり屋の主人公に感情移入して楽しんだものだった。
今回、フィンランド・メソッドに取り組んでいる先生からの依頼で今までとは少し毛色の変わった本を購入した。古典系の本が多く、『ツバメ号とアマゾン号』『二年間の休暇』などに混じってこの本もリストアップされたと言うわけだ。本の受け入れをしながら、ちょこちょこと読んでいたのだが、ついなつかしくなって家に持ち帰り本格的に読んでみた。
本自体は昔と少しも変わらないのに、私の気持ちが変わっていることに驚いてしまった。子どものときは、「約束したのに置いてきぼりにされたしまった」ノンちゃんの気持ちに寄り添い、雲の上であんなに楽しかったのだからまた行けたらいいのに、と思っていたが、今回読み返して涙がこぼれそうになったのはお母さんの気持ちだった。
大病をして、失うかと思いながらやっとのことで守った娘の命を二度と危険にさらしたくない。都会に連れ出せばまた病気になるかもしれない。約束を破ってでも置いて出た娘が、あろうことか池に落ちて(娘の言葉を借りれば飛び込んで)意識が戻らない。やっと目覚めたかと思えば、雲の上でおじいさんと過ごしたなどという話をする。
ノンちゃんが雲の上に行った話をすればするほどぞっとしてしまう母の気持ちが痛いほどわかるのだ。子どもの気持ちと、大人の気持ち、両方がわかる年頃になってこの本に再会できたことをうれしく思った。
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