ヒットラーのむすめ
「Do you know “Hitler’s daughter”?」
オーストラリア タスマニア島出身というALT(英語助手)の先生に聞いてみた。こちら、怪しげな英語交じりの日本語、彼はかなり流暢な日本語で。
「What? 何ですか?日本語の本は、大学で習ったKobo Abe とHaruki Murakamiと Junichirou Tanizakiしかわからなくて」
「いや、これはオーストラリアの作家の書いた本なんですけど。今ちょっと名前が出てこないので後で作家の名前を調べておきますね」
2004年に日本語訳が出ていて、今年までの2年間に初版第8刷まで出版されている。かなり売れている本だ。オーストラリアの文学、というか、児童文学の本は、エミリー・ロッダしか知らなかった。前述のALTの先生も、エミリー・ロッダは有名ですよ、と言っていた。
今回これを読んでみて、レベルが高いなあと正直に感じた。ストーリー運びのうまさ、登場人物の描写など感心してしまった。さくまゆみこさんの訳もいいのだと思う。
雨降りのうっとうしさ、もどかしさの中で、マーク少年がアンナの話に引きつけられていくのがとてもよく描写され、過去と現在は続いているのだという理解が深まっていくのがよく分かるのだ。読んでいるこちらの心にも、すっと落ちてくる。納得できるのだ。
平和教育にとって、過去のお話を今の子どもにわかってもらうことの難しさがあるのだが、これはその点を見事にクリアしていると思う。
架空のお話として続いてきた「ヒットラーのむすめ」が、ぐるりと回って、見せる落ちも、いい。
中学生にはぜひ、読んでほしいのだが、まだ借り手がつかない。今読書月間中のイベントとしてやっている「わたしの勧めるこの一冊」に取り上げてみよう。
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