しょうが糖
子どものころ、大好きなおやつのひとつに「しょうがのお菓子」があった。いつも食べられるものではなく、八幡さまの秋祭りのときだけ売っているものだった。お祭りの屋台の中に一軒だけこのしょうが菓子(しょうがの砂糖漬け)を売る店があった。お参りしてからでないと買ってもらえない。いつも大慌てで手を合わせ、祖母の手を引っ張るようにして屋台に急いだものだった。
箱のように膨らませた白い厚紙の袋の中に、ビニール袋に包まれた菓子がほんのぽっちり入っている。子ども心にも量が少ないのが不満で、大きい袋をねだるが、大、中、小とあるうち、小袋しか買ってはくれなかった。子どものおやつにするには高価なものだったのだろう。
いつとはなしに忘れてしまっていたのだが、先日インターネットでこれに似たものを見つけた。『しょうが糖』と言う名前だったが商品説明を見ると間違いなく、しょうがの砂糖漬けである。なつかしくなり、取り寄せしてみた。
届いたのを見ると、記憶にあったのより分厚く、黄色だった。昔食べていたのは、薄くスライスされていて、色も真っ白に漂白されていた。味も、今回買ったものはしょうがの風味がより強く残っていて、お菓子というよりは確かに『しょうが糖』である。でも、甘い砂糖の味の後からしょうがのぴりぴりした辛味が舌に来るところなどは同じで、おいしいおいしいと食べていたら、来た。
ガチマヤー(食いしん坊)のウチの娘だ。この子は、食べ物に対する好奇心が強いというのか、誰かが食べているものは、自分も食べないと気がすまないたちだ。上の息子は食わず嫌いで、珍しい食べ物はまず拒否する。どちらがいいのか悪いのか、わからないが、とにかく食べているのを見つかった以上食べさせないではすまない。
私も自分の子どものころの味を子どもがどう感じるか、興味があったので少しだけかじらせてみた。
「甘くておいしいよ。」と言った途端、
「う~、からい!おかあさん、出していい?食べられないよ」
あら、珍しい、口に入れたものは絶対飲み込むのに、と思ったがそれどころではない。泣きそうになっている。ごめん、ごめん、とあやまって水を飲ませると落ち着いたが、この子でも食べられないのか、と不思議な感じがした。
そういえば、子どものくせにこんなものが好きで、と祖母があきれていたっけ。子ども心に「おばあちゃん、変なこと言うなあ。おいしいのに」と思っていたが、あれは、私の味覚が変だったのか。変わり者の子どもだったということがわかった、今回の出来事でした。
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